Q:精神障害者を雇用するときに利用する制度はありますか?
A:いくつかの制度がありますが、お住まいの地域によっては、利用できない制度もあります。
制度名 | 申し込み先 | 担当機関 |
トライアル雇用事業 | 住所地を管轄する公共職業安定所 | 公共職業安定所 |
職業準備支援事業 | 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構神奈川障害者職業センター | 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構神奈川障害者職業センター |
職場適応援助者による支援事業 | 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構神奈川障害者職業センター | 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構神奈川障害者職業センター |
就労支援事業 |
神奈川県障害者就労相談センター |
神奈川県障害者就労相談センター |
障害者就職促進委託訓練事業「トライ!」 | 住所地を管轄する公共職業安定所 | 神奈川県産業人材課 |
Q:雇い入れた後にまず気をつけることは何ですか?
A:勤務時間や日数、作業内容を本人のできるペースから始めて少しずつ増やしていくことが大切です。仕事に、はっきりした作業の枠組みが決まっていると達成しやすい傾向があります。
Q:雇用後、何かあったときはどこに相談したらいいのですか?
A:障害者を事業所に受け入れるとき、その障害者と会社の調整ができる支援者がいるか確認してください。支援者は障害者職業センター、地域作業所、精神科デイケア、精神障害者の就労支援をしているNPO法人、精神保健福祉センター、保健福祉事務所などの職員が調整役になり得ます。
【事例2】B総合病院:作業のスピードの低下が見られる。 | ||
状況と対応:「できるだけ仕事の範囲が少ないものから少しずつ仕事や作業に慣れる様に実習させていただきたいのです。」とお願いしカルテの整理業務として実習から入りました。実習での作業が評価され週4日、1日3時間のアルバイトとして雇用されました。 作業のスピードが上がらないとき、新しい作業で同じことを度々聞くことが増えてしまったときは、現場のリーダーがジョブコーチにはっきり伝えてくれるので、実習生も交えて、皆で仕事の進め方について工夫しました。大抵仕事を知り尽くしたリーダーの提案が、工夫の元になりました。仕事の手順やチェックする項目のメモを作り、本人が仕事を進めやすいようにしてくれました。 同じ職場の仲間だから、こうなるともっといいね、という視点でいつも改善点を提起してくれるリーダーの下、元実習生はがんばって、もう2年も仕事を続けています。 |
【事例3】Cレストラン:忙しい時間帯になると慌ててしまい間違いが目立つ | ||
状況と対応:職安からの紹介で障害者雇用として週4日、1日5時間勤務(始めは、週3日、1日3時間からスタート。徐々に増やしていった。)雇用と同時にジョブコーチの支援が入りました。 ランチバイキングの際、忙しくなると料理、デザートの追加に追われる。業務用の冷蔵庫は、驚くほど扉の数が多く中に何が入っているのか覚えられない。急がされている時は特に探し物が見つからない。そこでマグネット版を用意し中に何が入っているか、マジックで記入し貼らせてもらいました。また、サラダの盛り方やデザートのセットの仕方・野菜の切り方なども写真に収めたり図に描いたりしてファイルを作りました。確認して作業をするのでなく解らなくなり困ったとき、自信がない時に見ればいいのです。人が忙しくしている時に質問するのは勇気のいることです。また、同じことを何度も聞くのも自信喪失になります。真面目な方ですので、暇なときはそのファイルに目を通していました。ファイルがあるだけで、安心して作業に取り組めるようです。 |
【事例4】D通信機:実習生を受け入れて欲しいと依頼があった。 | ||
状況と対応:「精神障害を抱える人の職場実習をお願いしたいのですが。そちらの事務の仕事で、普段職員の方ができずにたまってしまっている、すき間の作業がないでしょうか?」「いいですよ。ありますよ。」事業所開拓に行きづまっていた精神保健福祉センターのジョブコーチは宝の山を掘り当てたような気がしました。D社は大手精密機器製造株式会社です。電話での実習の申し込みに、精神障害者にもできる作業を職場の作業の中で、すっと、思い浮かべられる、総務課のK係長のセンスがあったと感じています。 実習の進め方にも、実習担当課の課長、係長さんにも話を通しておいてから、実習生の受け入れをしてくださったので、実習中も安心して、実習生のペースでゆっくり仕事を覚える場を提供していただけました。またほかの部署にも、精神障害者ができる仕事はないか、というジョブコーチの注文にあう作業を見つけ出してくださり、実習生は3ヶ月の実習後そこでパート雇用されました。パート雇用の形態も本来ならば1日6時間が規定ですが、精神障害者が短い時間から少しずつ勤務時間を延ばしていくほうが、健康を損ねず働き続けることができるということを十分理解していただき、規定よりも短時間でパート雇用をスタートできるよう調整してくれたののでした。おかげで元実習生は、日々一緒に作業する現場の職員さんにゆっくり、指導を受けながら、できる作業を増やしつつ、今順調に勤務時間を延ばし、元気に働いています。 |
【事例5】E産業:体調不良や作業能力の低下など仕事を継続する上で問題が発生。相談もしたい、支援も受けたい。 | ||
状況と対応:
ジョブコーチは求人チラシから、実習生の希望の溶接の仕事ができる会社をみつけた。社長は人情に厚く、精神障害を抱えても、いつかは治ると信じて、懸命に仕事を教えてくれた。実習が終わると、トライアル雇用を利用し、仕事ができそうか見極めた。そして週5日、1日5時間のパート雇用で4年もの間、熱心に面倒を見てくれたのだった。本人が通っていた地域作業所の職員も、しばしば職場に顔を出し、本人の不安感や作業上の問題点を社長と話し合いながら、解決してきた。 猛暑の夏、地域作業所職員に社長からTELが来た。「本人が泣いてしまってどうしていいかわからない。」本人は急に夢に見たことを思い出して悲しくなってしまったとのこと。 これまでそんなことは一度もなかった。猛暑による疲れだったのか、薬を増やして、1週間の休みを取ると、職場に復帰することができた。 しかし再び、社長より「本人に合う作業がなくなってしまった。トイレにも度々通う。体調を整えて、本人のペースに合う仕事を検討したほうがいいのではないか」と意見があったとき、作業所職員は本人と話し合い、自主退社して、もう一度体調を整えることから始める事にした。本人は長年勤めた職場を離れたくなかった。でも一方でほかの人より、仕事が遅くなっていることも分かっていた。やめたくないけど、仕方がないことと了解し退職した。 生活の事情も心配しながら、熱心に面倒を見てくれた社長にしても、心残りな結果だったと思うが、地域作業所の職員は本人の体調がなかなか戻らない毎日を見ながら、社長が提案してくれた時期が、その会社で仕事をする引き際だったと感じている。これ以上働いていたら、健康そのものも崩してしまっていたかもしれないので。 |
【事例6】Fレストラン:スタッフが辞めたことで作業分担量を増やした。残業もお願いした。その結果長期の休養が必要になってしまった。 | ||
状況と対応:熱心に求職活動を行ってきましたが、障害を明らかにしての就職は困難を極めました。2年ぶりにようやく仕事につくことができました。スッタッフの皆さんもとても暖かく、忙しくても、ミスをしても声を荒げることはなく雰囲気の良い職場でした。雇用と同時にジョブコーチがついたことで、ご本人は安心して作業に取組めたと話してくれました。5ヶ月が過ぎ、ジョブコーチの支援の頻度も3週間に1度くらいになりました。お店の経営状況から人員の削減が行われ、彼が担う作業もかなり多くなっていました。疲れないか?負担になっていないか?など訪問した際に問い掛けるのですが、「大丈夫です。」の一点張りです。しかし、残業が多くなっていることや勤務日が増えていることで事業所の方に相談をしました。事業所の方は、了解してくださっても、本人は迷惑がかかると連続した(2~3日)お休みを取りませんでした。 しかし、それからまもなくようやく本人から「辛いんです」と訴えがジョブコーチにあり休養をとらせてもらうことになりました。主治医からもしばらく休養ということを伝えられ10日間休むことになりました。迷惑をかけると遠慮したことで反って長い休みを取ることになりました。また、事業所のほうも人手が足りないからと無理をさせてしまったことで反って長期のお休みを取らせることで痛手となってしまいました。 勤務日数を増やしたり、残業をしてもらうことはかなり慎重に段階を踏んで徐々にではなと難しいのかもしれません。 |